日本障害者ライダーズ協会
JDRA
脊髄損傷の尾藤氏にお聞きしました。
ATVは新しい波です。


【はじめまして、尾藤さん】
お忙しい中に沢山の写真をこの為にお取りいただき本当に有難うございます。ご協力頂いた奥さんにも宜しく!ATVというのは、まだ新しい乗り物ですね。エンジンは50ccだけど普通車の免許がいります。
価格は比較的安いですが、経験者が少なく、ATVを初めて乗ったのが、購入した自分の車って場合が殆どです。色々なお話をお聞かせ下さい。

原因は事故なのでしょうか? 
はい。大分県在住の尾藤です。ZZR1100にて出勤中、軽自動車が左右確認無しで、駐車場から出てきたところに、突っ込みました。ぶつかった時、逆さ状態でフロントガラスに背中からあたり、そのまま、アスファルトに頭から落ちた感じです。
次に気がついたときは、病院の治療室で、誰かが向こうの方で「もしかしたら歩けなくなるか、何らかの障害が残るかも知れません」と話している声が聞こえましたが、まさかその時は自分の事を話しているとは思いもしませんでした。
 
【ATVの安定性は】
四輪といっても、自動車のような安定性はないです。
路面のギャップなんてもろに食らいます。走行中は二−グリップなんてできません。
普通の方が乗れば、足を使ってショックを吸収できそうですが、自分なんか、常に座っている状態なので、過去に乗っていたリジットフレームや、リジットサスのアメリカンと乗り味は似ています。一応フロント2本・リア1本のサスが有るはずなのに・・・ナゼ?
 
 
周囲の反応はどうなのでしょう?
まず、「楽しそう」「気持ちよさそう」これが一番多いです(知り合い・初対面問わず)
次に、「高そう(値段が)」「これ原付?」「車椅子乗ってんの?」ですね。
変な顔をしたり、いちゃもんを付けて来るような方は、まず居ないですね。何も知らないお巡りさんには何度か止められましたが、つい先日、隣に止まった白バイの方との会話ですが、
白バイ「ヘルメットは?」
「かぶらんでも良いんです」
白バイ「へ〜、気持ち良い?」
「気持ち良いっす」
白バイ「いいな〜」
この後、信号が変わったので話は終わりましたが、思わず笑っちゃいました。
あまり一般的に知られてないだけで、走行中に、車からケータイのカメラなんかでたまに写真撮られますね。
 
 
【日常使いは車より便利?】

車椅子搭載に慣れても、やはり車の方に分があると思います。
車はエリシオンですが、電動スライドドアなんかで、車椅子積むのが楽チンです。雨が降り出しても濡れませんしね。でもATVに乗っちゃうんですよ、雨の日・荷物が多い日意外はまずATVです。
単純に楽しいんですよね、何かこう・・・ウキウキすると言うか、初めてバイクに乗ったときみたいと言うか、とにかくただ面白い。
下手したら、一週間以上車に乗らないなんてこともあります。
アクセルですが、右手親指のみのレバー式です。バイクのグリップ式もあるみたいですが、あまりお勧めできません(一度装着した後の、個人的意見です)
  
 


乗り降りの実際を見せていただきました。



【ATVに関して】メーカー・ データ 価格など

メーカーアドリー製です。
■価格は当方のモデル(前進2段・リバースギア・リアブレーキがディスク仕様)が30万円弱です。(リアキャリアなどオプションしだいで、+1・2万円くらいですかね。
■エンジンはおそらく、ヤマハスクーターのJOG50(3kj)ですが、ギア付きモデルは、JOG系のエンジン流用は基本的に出来ない様です。(ギアボックスの形状が違う為)
当初は90ccのエンジン乗せ替えを企みましたが、現物合わせをした時に形状の違いに気づきました。
■バックギアは必需品です
【乗車インプレ】

パワー
平坦な道では、50ccのエンジンとしてはまずまずのスピードが出ますが、上りの坂道(特に長い坂道)では、ハッキリ言って後ろに渋滞が出来ます。見る見るうちに、速度が落ちますので。まぁ、50のエンジンにあの大柄な車体ですから・・・もしチューニングするなら、速度を上げるよりも、上り坂で減速しないようにトルク重視のチューニングをお勧めします。

ブレーキ性能
フロントブレーキはドラムブレーキで、制動力はハッキリ言って期待薄です。
リアブレーキは、ディスクブレーキでこれは効きます!(簡単にロックします)
どちらかと言うと、(前)はサブ、(後ろ)がメイン的使い方になると思います。

コーナリング
コーナーリング時は、コーナー進入前にしっかりとした減速をしないと、簡単にIN側が浮きます。あと、路面状況によりますが、リアタイヤがコーナーリング中にスライドを始める時もあります。

燃 費
すいません。これに関しては、データがありません(理由は後ほど・・・)ですが、タンク容量自体5リッターと少ないので、小まめな給油をお勧めします。
【その他】
よく「原付免許でのれる?」と聞かれますが、ATVは一般的に言う「ミニカー」登録です。ですから運転には「普通車免許」が必要です。

購入後は、広場や空き地などでの練習をしっかりした方が良いと思います。と言うのも、走行中に路面の「ギャップ」・「ワダチ」に乗りますと、車体が予期せぬ方向に向く場合もあるからです。ですので、練習で綺麗に舗装された道路を選ぶと、基本操作は覚えれても、もしもの時の反応が遅れては、そこから事故へつながる可能性もあります。

あと、障害の部位にもよりますが、当方みたいに腰から下に麻痺などを抱えて、ニーグリップが出来ない方は、ブレーキング時に上体を支えれる位の腕の筋トレは行った方が良いと思います。後ろに車椅子を積むと、乗車位置が前よりになると思いますので、腕への負担は意外にあります。最後ですが、電装関係はあんまり良いものではないと思います。まず、

@
メーターが自転車?用みたいなものでまともに機能しません。これのおかげで、走行距離が分からず、燃費も分かりません。
(現在、他の二輪用メーターが流用出来ないか思案中)
Aインジケーターが点灯不良を良く起こす。
(オイル満タンなのに、よく警告灯がつく・ロービームなのにハイビームとの表示ナドナド・・・。これまた現在対策思案中)

【車椅子搭載に関して】
これに関しては、基本的に自分自身の工夫次第で如何様にもなると思います。と言うのも、当方は、ラチェット式タイダウンベルトX2本のみで固定しています。(えっ?と思われる方もいらっしゃるでしょうが、この固定で林道に行ってます)

後は車椅子の仕様ですね、折りたためる車椅子でしたら、当然積めると思いますが、固定式ですと、大きさ的に無理だと思います。
リアのウインカーは良くあるバイク用で貼り付けタイプを使い、サイド部分に貼り付けたほうが良いと思います。ノーマル位置ですと、車椅子が邪魔して後ろから見えにくくなると思います。

【ATVまでの経緯】
バイクに乗っている頃(事故前)から知っていましたので、
単純に「これなら乗れる!!」って気持ちからだと思います。
搭載方法などは、注文後に考えました。
【バックギア】 絶対必要?

「必要」
です。何故かといいますと、乗る方の障害にもよりますが、自分のように下半身麻痺だと狭い路地や行き止まりなどで、Uターン出来ないときバックギアが付いてないと完全にお手上げ状態になります。
下り坂等でこのような状況になると、バックギアが付いて無く、しかも単独の場合、Uターン出来る場所まで自力で引き上げないといけなくなります。
普通に考えて、車椅子に乗った状況で100キロ以上あるATVを引っ張るのはまず無理だと思います。
 
 
【自身の障害について】
障害手帳には、「頚髄損傷による両下肢機能全廃」と記載されております。事故当時は、C-3の不全ですと言われ、首から下は全く動きませんでした(感覚もなし)

リハビリ(現在も継続)のおかげで、腰から下は未だ麻痺しておりますが、上半身の動きは大分取り戻せました。



■リハビリの効果がスゴイですねえ。その辺を詳しくお願い出来れば・・・

これに関しては、身近に居る車椅子に乗っている方、病院の先生、リハビリの先生方など大変驚いていました。ここまでこれたのも、やはり気持ちの持ち方ではなかったのかなと思います。

まず、「深く考えず、単純に考える」ですね。
ピクピクと指先が動き始めてからは「足が使えないなら、腕を鍛える」から始まり、とにかく「何々が出来ないなら、出来るように体を鍛える」
と単純に考えてきました。(それでも結局出来ないことは多々有りましたが・・・)

それと、「周りの人達」じゃないでしょうか、

事故後も入院中も現在も、友人や知り合いからの私に対しての接し方は何一つ変わっておらず、「車椅子に乗っているから・・・」とかを理由に気を使ってくること等一切無く、普通の者として接してくれるおかげで、私自身も「車椅子に乗っている」、「足が動かない」等の理由で周りが気を使わなくていいようにしたいと思えるようになりました。
人によっては難しいのかもしれませんが、私は出来る限り前向きに物事を考え、挑戦してみたいこと等があれば迷わず挑戦する様にしています。
出来たら、増えては欲しくないですが、これから先同じように障害を持ってしまった方と話をしたりして何かアドバイス出来たらと思います。(障害持って、まだ1年半ほどですが・・・)
 
遠慮なくコンタクト下さい。




昨年末より車椅子バスケを始めたのですが、先日、他県で車椅子バスケをしている方が、自分のATVに試乗した後にその方も購入したと聞き大変うれしく思いました。
自分は大分県に住んでいますが、他にも乗ってみたいとか思っている方でお近くに来られる事がございましたら、ぜひご連絡ください。都合さえ会えば好きなだけ試乗していただきたいと思います。
私は現在も、もっと楽に車椅子から乗り移ることが出来ないか思案しておりますので。
 
 

尾藤さん、本当に有り難う御座います。感謝します。2005-06-15


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